コラム

事務処理はAIで対応できるか?── ChatGPT Work と Claude Cowork の比較(2026年8月24日時点)

まず結論から述べます

  1. チャット型AIでは事務処理は終わらない。 答えは返ってくるが、Excelに貼り付けて整えるのは結局あなた。
  2. 本命は「エージェント型」。 ファイルを直接読み書きして、完成品まで作る。ChatGPT Work と Claude Cowork の2つ。
  3. Googleは会社では使えない。 個人アカウント限定・米国限定のため、法人は現状スタートラインに立てない。

 

1. まず用語を整理する(ここが一番混乱します)

「AIで事務処理」と言っても、実は3つの別物があります。

 

作業内容

事務処理に使えるか

チャット

質問に文章で答える

△ 相談相手どまり

ブラウザ操作

Webサイトを見て、クリック・入力する

○ Web業務のみ

エージェント(本命)

PCのファイルを直接読み書きし、完成品を作る

 

チャット型AIの限界

これまでのAIはこうでした。

「決算の領収書はどう整理すればいい?」 と聞けば、整理方法を文章で教えてくれる

でも、領収書を1枚ずつ読んでExcelに転記し、集計式を入れる作業は人間のままです。回答をもらった時点で、仕事は1ミリも進んでいません。

エージェント型AIが変えたこと

「このフォルダの請求書PDFを読んで、月別の一覧表をExcelで作って」 → フォルダ内のPDFを読み取り、数式入りのExcelファイルとして保存するところまでやる

説明書ではなく完成品が届く。 これが決定的な差です。

 

2. 各社の「事務処理向け」製品はこれ

名前が紛らわしいので、まず整理します。

会社

事務処理向け

エンジニア向け(別物)

OpenAI

ChatGPT Work

Codex

Anthropic

Claude Cowork

Claude Code

Google

(法人向けは未提供)

 

⚠️ Codexはコーディング用です。

事務処理の比較対象ではありません。OpenAI公式も「ソフトウェア開発にはCodex」と役割を分けています。同じデスクトップアプリの中に「Chat / Work / Codex」と3モードが並んでいるので、混同しないでください。

Claude側も同じ構造で、デスクトップアプリに「チャット / Cowork / Claude Code」の3つが並んでいます。

 

▪️この2つは真っ向勝負です

  • 2026年7月7日:AnthropicがCoworkをWeb・モバイルへ拡大
  • 2026年7月9日:OpenAIがChatGPT Workを発表

わずか2日差。両社とも「複数のツールを横断して情報を集め、完成品を返す」というまったく同じコンセプトを掲げています。AI競争の主戦場が、コーディングからオフィス業務へ移った瞬間です。

 

3. 実際に何ができるのか

経理・会計

「フォルダ内の領収書画像から、日付・会社名・金額を抽出してExcelに入力して。ファイル名も『日付_会社名_金額.pdf』にそろえて」

と指示するだけで、読み取り → 転記 → リネームまで一括で実行します。

資料作成

「生成AIの仕組みを2ページで説明する資料を作って」

と指示すれば、指定フォルダにPowerPointファイルが生成されます。Word・Excel・PowerPoint・PDFの読み書きに対応しています。

ファイル整理

「未整理フォルダのファイルを種類別に分類して。重複があれば報告して」

と指示するだけで、新しいフォルダを作り、振り分けまで完了します。

定期実行

「毎朝のニュースまとめ」「毎週金曜のスプレッドシート更新」

これでスケジュール設定で自動化できます。ただしClaude Coworkの場合、PCが起動していてアプリが開いている必要があります(完全なクラウド実行ではない)。

外部サービス連携

Gmail、Google Drive、Slack、Microsoft 365などと直接つなげます。Claude Coworkは2026年6月時点で340種類以上のコネクタに対応。会計ソフトのマネーフォワードクラウド会計もMCP連携に対応し、仕訳登録まで可能になっています。

 

4. ChatGPT Work と Claude Cowork、どう違う?

 

ChatGPT Work

Claude Cowork

提供開始

2026年7月9日

2026年4月9日に正式版

成熟度

新しい(順次展開中)

先行、実績が積み上がっている

料金

Plus以上(デスクトップ版は無料プランでも制限付きで利用可)

Pro(月20ドル)以上。無料プラン不可

作業場所

指定フォルダのみ

指定フォルダのみ

承認の仕組み

重要操作前に確認

Manual / Auto / Skip の3段階

法人管理

Business / Enterprise

Team / Enterprise(権限・予算上限の設定可)

 

5. 【重要】実際に使った人の評価

カタログスペックより、使用者の声のほうが導入判断に効きます。以下はChatGPT Workを実際に検証した人たちの報告をまとめたものです。

評価は「速い」で一致している

検証内容

結果

検証レポートの作成

約95秒で実用的な計画書が完成

分析+グラフ作成+画像レイアウト

手作業なら1日 → 約3時間で完了

ブログ記事・SNS画像の制作

通常のChatより明らかに制作スピードが向上

ただし、期待値はここに置くべき

検証者の言葉で、最も的確だったのがこれです。

「戻ってきたら資料ができている」という体験は本物。
ただし、そのまま提出できる品質とは限らない。Workは完成品を吐き出す機械ではなく、上質なたたき台を勝手に作ってくれる相棒。 叩き台が20分で返ってきて、それを自分が仕上げる——この分業と考えれば価値は十分。
逆に「これで資料作りから解放される」と期待すると、必ず落胆する。

使い勝手の「クセ」──ここがChatと決定的に違う

 

従来のChat

ChatGPT Work

入力するもの

聞きたいこと

何を実現したいか

向いている使い方

雑談・相談・壁打ち

完成条件を決めて発注する

進め方

会話しながら詰める

渡したら走り切る

 

検証者は「目的解決型の思考をするのが前提になっている」と表現しています。雑談や思いつきの質問をする場所ではありません。

 

そのため実務では、Chatで方針を詰めてからWorkに成果物を作らせるという往復が現実的です。いきなりWorkに投げると、意図が固まっていないぶん的外れな成果物が返ってきやすくなります。

うまく使うコツ

長いプロンプトを書くことではなく、完成した状態を共有することが鍵だと複数の検証者が指摘しています。具体的には次の6点を先に決めます。

  1. 目的
  2. 対象者(誰が読むか)
  3. 使用する情報
  4. 制約
  5. 品質基準
  6. 途中の確認地点

⚠️ 導入前に必ず知っておくべき3点

利用枠の消費が激しい

月200ドルのProプランで週間利用枠の**2%**を消費した作業について、単純比例で試算すると——

プラン

同じ作業での消費

Pro(月200ドル)

2%

Pro(月100ドル)

8%

Plus(月20ドル)

40%

月20ドルのPlusで日常的に回すのは現実的ではない可能性があります。 最新の高性能モデルをフル回転させて成立している機能なので、当然といえば当然です。

ファイルがゴミ箱を経由せず消えることがある

検証者が実際に画像を失っています。必ずコピーしたファイルで試してください。 これはCoworkでも同じ原則です。

個人プランは入力が学習に使われる

Plus等の個人プランはデフォルトで学習に使われます(オプトアウト可)。機密情報を扱うならBusiness以上(学習除外がデフォルト)。ここはCowork側も同じ構造で、業務利用はTeam/Enterpriseに集約するのが原則です。

AIが作れないものもある

議事録からタスクを起こさせた検証では、「木曜で確定か?」を勝手に断定せず”要確認”として残す挙動が評価されていました。一方で、メモに書かれていない担当者や期限は、AIにも作れません。 最後は人が埋める前提で運用してください。

 

6. 結局どちらを選ぶか

すでにChatGPTが社内に定着している → ChatGPT Work アカウントを増やさずに始められます。ただしPlusでは利用枠が厳しい点は覚悟が必要です。

細かく統制したい/実績を重視する → Claude Cowork 2026年4月GAで先行しており、承認モード(Manual/Auto/Skip)やフォルダ権限の設計が細かい。Team/Enterpriseではグループ単位の利用制限や予算上限も設定できます。

判断軸をひとつだけ挙げるなら「自分がすでに使っているツールで選ぶ」というのが、検証者たちの共通見解です。Google Workspace中心か、Microsoft 365中心か、ChatGPTをすでに契約しているか——AIの性能比較より、自分の仕事道具との相性のほうが日々の体感を左右します。

迷うなら、1つの定型業務を決めて両方に同じ作業をさせるのが確実です。

 

7. なぜGoogleは選択肢に入らないのか

Chromeに標準搭載で一番手軽そうに見えますが、ブラウザを自動操作する機能(auto browse)の条件がこうです。

  • 個人のGoogleアカウント必須(仕事用・学校用アカウントでは利用不可)
  • アメリカ限定
  • 有料プラン必須

Google Workspace(@会社名.co.jp)で運用している会社は、そもそも機能が出てきません

よくある誤解 「Geminiは会社で使ってるよ」——それは別の機能です。 日本で使えるGemini in Chromeは「読む・まとめる」まで。ファイルを操作するエージェント機能ではありません。

個人アカウントで代用するのも不可です。監査ログも退職者のアカウント管理も成り立たず、情報漏洩時の責任の所在が消えます。

 

8. 任せられる作業/任せてはいけない作業

作業

判定

請求書・領収書の読み取りとExcel化

資料・レポートの作成

ファイル整理・リネーム

調査・情報収集とまとめ

定型作業の定期実行

ネットバンク・カード会社サイトの操作

⚠️ 手動承認で慎重に

給与計算・請求データの転記

毎回同じ結果の保証がない

振込・契約締結・ファイル削除

❌ 人間が判断する

判断基準はこれだけ

「間違えたら取り返しがつくか?」

つく → 任せてよい

つかない → 人間がやる

「毎回まったく同じ動き」が必要な作業は、AIではなく従来のマクロやRPAの仕事です。

 

9. 安全に使うための実務ルール

専用フォルダを作る

デスクトップ全体やドキュメントフォルダ全体を指定してはいけません。 専用の作業フォルダを作り、処理したいファイルのコピーだけを入れる。重要なデータはバックアップしてから渡す。

エージェントは許可されたフォルダ内のファイルを作成・変更・移動・削除できます。範囲を絞ることが最大の防御です。

承認モードは最初「手動」に

Claude Coworkには3段階の承認モードがあります。

  • Manual:操作のたびに確認
  • Auto:危険と判定した操作はブロックし、それ以外は自動承認
  • Skip:事前チェックなし(最もリスクが高い)

最初はManualで動きを見てから緩める。金銭や個人情報を扱うサイトの操作は、Autoにせず画面を見ながら進めてください。

 

社内ルールは3行で足りる

① 読む・調べる・作るは自由
② 出来上がったものは人間が確認
③ 送信・購入・契約・削除は人間が実行

 

法人利用の注意

個人向けPro/Maxプランでは、会話や操作データが学習に使われる設定が既定で有効になります。業務利用はTeam/Enterpriseに集約するのが原則です。

 

まとめ

事務処理はAIで対応できるか → できる。ただしチャットではなくエージェントで。

  • 選択肢は ChatGPT WorkClaude Cowork の2つ
  • Codexはコーディング用。事務処理の比較対象ではない
  • Googleは法人では現状使えない
  • 完成品ではなく「上質なたたき台」が返ってくると考える
  • 月20ドルのプランでは利用枠が足りない可能性が高い
  • 専用フォルダを作り、コピーで試し、承認は手動から始める
  • 「間違えたら取り返しがつかない作業」は人間が持つ

 

参考

公式情報

 

報道

  • 窓の杜「デスクトップ版ChatGPT大幅刷新 AIエージェント『Codex』統合、『ChatGPT Work』に」(2026年7月10日)
  • ITmedia「Anthropic『Claude Cowork』が正式版として一般公開」(2026年4月)

 

実機検証レポート(第5章の出典)

 

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