コラム

下請法はどう変わる?2026年に向けた「抜本見直し」

2025年から2026年にかけて、日本の中小企業取引の基盤となる「下請法(下請代金支払遅延等防止法)」は、1956年の制定以来、約70年ぶりとなる抜本的な見直しが進められています。

本記事では、現在議論されている改正の背景、主な変更点、および実務における影響を客観的に解説します。

1. 改正の背景と目的

現行の下請法は、発注側と受注側の「資本金格差」に主眼を置いてきました。しかし、サービス経済化やスタートアップ企業の台頭により、現行基準では十分に保護できないケースが増加しています。

今回の改正は、労務費やエネルギーコストの上昇を適切に価格転嫁できる環境を整備し、サプライチェーン全体での共存共栄を図ることを目的としています。

2. 改正の主な変更点(新旧比較表)

改正によって変更が予定されている主な項目は以下の通りです。

項目 現行制度(改正前) 改正後の方向性(2026年〜)
適用要件(対象判定) 資本金の額のみで判定 資本金に加えて「従業員数」を追加
価格転嫁の義務 買いたたきは禁止(基準が曖昧) 労務費等の転嫁に向けた協議を義務化
支払手段(手形等) 期間60日以内なら可 手形決済の原則廃止(現金払いへ)
物流・運送への対応 一般的な役務提供の一部 特定運送委託としての監視・規制強化
実効性の担保 勧告・公表が主 課徴金制度の導入等の制裁強化検討

3. 実務に影響を与える3つの重要ポイント

① 適用範囲の拡大(従業員数基準の導入)

改正後は、資本金が少なくても「従業員数」が多い企業が、従業員数の少ない企業(あるいは個人事業主)に発注する場合、新たに規制対象となる可能性が高まります。多くのスタートアップ企業や中堅企業が新たに「親事業者」としての義務を負うことになります。

② 適正な価格決定プロセスの義務化

特に「労務費(人件費)」の価格転嫁が重要視されます。発注側が受注側からの価格交渉の申し出を拒否することや、コスト上昇の根拠を確認せずに一方的に価格を据え置くことは、明確に法違反となるリスクが生じます。

③ 決済手段の適正化(手形廃止への移行)

政府は2026年をメドに、紙の手形の廃止および下請代金の現金払いを徹底する方針です。既に2024年11月から「手形サイトの60日以内短縮」が義務付けられていますが、今後は手形そのものを使用しない運用が標準となります。

4. 執行体制と制裁の強化

改正では、公正取引委員会だけでなく、各業界を所管する省庁が連携して調査・指導を行う体制が強化されます。また、違反企業に対して金銭的なペナルティを科す「課徴金制度」の導入についても議論されており、コンプライアンス遵守の重要性が一層高まっています。

5. まとめ

2026年1月の施行に向け、企業は「取引先の再定義(従業員数による判定)」と「支払・交渉フローの見直し」を早期に進める必要があります。今回の改正は、適正な利益配分を通じた健全な経済循環を目指す構造的な改革といえます。

今後の対応チェックリスト:

  • 従業員数基準に基づき、新たに適用対象となる取引先をリストアップする
  • 2026年に向けた手形廃止・現金振込へのシステム移行準備
  • 価格改定の協議プロセスを社内マニュアル化する