コラム

デジタル社会形成基本法改正のポイント

—— 何が変わり、どこが重要なのか

行政手続きや社会サービスのデジタル化を進めるために、デジタル社会形成基本法などの一部改正案が公表されました。
今回の改正は、単なる「手続きのオンライン化」ではなく、社会の共通データ基盤を整えるための大きな変革と位置づけられています。

特に重要なのは、行政や企業が利用する基本情報データ(住所や法人情報など)を共通データベースとして整備し、連携できるようにするという点です。
これにより、手続きの効率化やデータ品質の向上が期待されています。


新旧比較:今回の改正で何が変わるのか

項目改正前(旧)改正後(新)
規制・制度の見直し技術進化や社会変化に対して制度改定の仕組みが弱く、改善が遅れやすい状態だった。継続的・自律的な制度見直しを法として明記。テクノロジーの変化に合わせた改良を前提化。
データの扱い(ベース・レジストリ)行政や企業がそれぞれ別々のデータを管理。形式や内容が統一されず、非効率・重複・ミスの原因になっていた。社会で共通して使う基礎情報を一元管理するデータベースを整備。最新・正確なデータ管理が制度上義務化。
手続きの方法(オンライン化)紙文書の提出、書面掲示、物理媒体の保存・提出など、アナログ手続きが多く残っていた。オンライン申請やデジタル掲示を基本へ。紙や物理媒体の使用見直しを推進。
ワンスオンリー・ワンストップ同じ情報を何度も書いて提出する必要があった。複数手続きは別々に処理する必要があった。一度提出した情報を再度提出しなくてよい仕組み複数手続きを一括処理できる仕組みを制度的に後押し。
アクセス・利用環境デジタルサービスの利用者環境への配慮が制度設計上限定的。誰でも利用できる環境整備を前提に設計(端末・通信環境・支援体制などを考慮)。

なぜこの改正が重要なのか(実務視点)

● データの一元管理が進み、業務プロセスが大きく変わる

バラバラに管理されていたデータが統一され、正確で最新の情報を参照できるようになることで、
業務設計・システム連携・データ品質管理が一段とシビアに求められるようになります。

● UX(利用者体験)を前提としたサービス設計が必須へ

手続きが「速く・シンプル・ミスがない」ことが当たり前の基準になり、
システム側が複雑さを吸収する設計が必須になります。

● 行政・民間サービス間のデータ連携が増加

API連携やデータ基盤の統合の議論が増えることで、
セキュリティ、標準化、データモデル設計の重要性がより高まると考えられます。


今後に向けたポイント

  • 「入力不要」「自動反映」が標準になるため、システム側は 再利用可能なデータ構造と連携設計が必要

  • 行政データ基盤とのAPI接続を前提にしたサービス設計が今後増える

  • UXとデータ品質の価値がさらに向上し、技術ではなく 使いやすさやプロセスデザインが競争力の源泉になる


まとめ

今回の法改正は、
「手続きをデジタル化する」から「社会のデータ基盤を作り直す」方向への大きな転換
と言えます。

  • データが一元化され精度が上がる

  • 手続きの重複がなくなる

  • 連携・自動化が進む

  • サービス利用の負担が減る

今後のシステム開発・事業運営では、
データ連携を前提とした設計、ユーザ体験の最適化、標準化対応
がより重要になります。