コラム _ 2025年6月2日 【2025年 下請法改正】価格協議拒否の禁止と手形払い原則禁止へ 2025年に施行される下請法改正は、取引の公平性を大きく前進させる重要な法律改正です。特に、価格協議拒否の禁止(明文化)手形払いの原則禁止は、下請企業・SES・制作会社・フリーランスにとって実務へ直結する大きな変更です。この記事では、ポイントを新旧比較で徹底解説し、最後に改正背景と実務対応策をまとめていきます。① 新旧比較:2025年改正でどう変わる?■ A. 「価格協議拒否」の禁止(最重要変更)従来は、法律に直接の明文規定がないため「発注側が価格交渉を受け付けない」という運用が横行していました。2025年改正により、この部分が 法律上の禁止行為として明文化 されます。▼新旧比較(価格協議)項目旧(改正前)新(2025年改正後)法律上の位置づけ価格協議拒否は条文上“違法”とまでは明記されていない禁止行為として明確に規定される発注側の対応「値上げは一切受けない」「単価は固定」の一方的運用も可能協議の場を設ける義務が発生し、無視・黙殺は違法下請側の権利交渉を申し出ても相手にされないケースが多い適正価格の協議要請が確実に認められる結果価格据え置きが常態化しやすい物価・人件費上昇への価格転嫁が可能に👉 “交渉の場が強制的に発生する”という点が最大のポイント。元請の「話す気がない」を法的に封じられるため、下請の交渉力が大幅に向上します。■ B. 手形払いの原則禁止長年問題となっていた“長期サイトによる資金繰り悪化”を解消するため、手形払いが原則禁止になります。▼新旧比較(支払方法)項目旧(改正前)新(2025年改正後)手形払いの扱い一定の制限はあれど許容されていた原則禁止下請側の資金繰り長期サイト(120日など)で資金繰り負担が大きい現金・振込中心となりキャッシュフローが安定元請側の義務手形利用の注意義務どまり支払い方法の見直しと早期化が基本取引への影響下請側が割引料を負担するケースも倒産リスク低下・経営安定につながる👉 資金繰りの負担構造が「下請に偏る」時代が終わる。■ C. 改正全体がもたらす変化(横断的影響)項目旧新価格の透明性元請主導で不透明協議義務で透明化支払サイト長期化を許容短期化・早期化下請側の交渉力弱い法的裏付けで強化全体の取引環境下請け構造の不公平が温存公正な取引慣行へ改善② 改正の背景 — なぜここまで踏み込んだ見直しに?2025年改正は、単なる微調整ではなく「構造改革」です。背景には次の要因があります。● 1. 物価・人件費上昇の中での“価格転嫁できない問題”労働力不足エンジニア単価の上昇物価・エネルギーコスト増にも関わらず、多くの下請企業が「値上げ不可」で苦しんでいた。● 2. 元請側が価格交渉に応じない構造問題ガイドラインでは“望ましくない行為”として扱われてきたが、法的強制力がなく運用改善が進まなかった。● 3. 下請の資金繰り改善を国の政策として重視手形払いの長期化・割引料負担は、中小企業の成長を阻む大きな原因とされてきた。👉 下請・中小企業の収益改善を重視する国家方針が、今回の大改革につながった。③ 実務で求められる対応(発注側・受注側)■ 1. 価格協議のプロセス整備発注側は以下を整備する必要あり:値上げ相談窓口単価見直しの判断基準協議記録の保存不当に拒否しないための社内ルール化受注側は:原価上昇の根拠資料(人件費・物価・社会保険料など)を整備定期的な協議依頼の運用を開始→ 資料を揃えるほど交渉が優位に。■ 2. 支払方法の見直し(手形廃止対応)発注側は:銀行振込電子決済ファクタリング等の活用へ移行し、下請の負担を軽減する必要あり。受注側は:資金繰り計画の再構築月次キャッシュフロー表の更新が重要。■ 3. 契約書・基本契約の改訂単価調整条項価格協議のフロー支払条件の明確化が必要。特にIT業界・SESは以下の文言の見直しが必須:「単価は固定とし、変更しない」「協議の義務を負わない」→ 改正後は明確にNG。■ まとめ2025年下請法改正は、価格協議拒否の禁止(明文化)手形払いの原則禁止という、下請企業を守るための大きな転換点となる改革です。特に、IT・SES業界など人件費変動の大きい業界では、「交渉しても通らない」というこれまでの状況が改善され、適正対価を得やすい環境が整備されます。 能動的サイバー防御の時代へ — エンジニアに求められる“予兆を読む力”2025年5月26日IT企業が知るべき「AI基本計画」の読み方まとめ2025年9月29日