コラム

システム開発業界にも適用!時間外労働の上限規制

働き方改革関連法の施行により、2024年4月から(中小企業は2025年4月から)システム開発業を含む事業・業務にも時間外労働の上限規制が適用されます。これにより、IT業界でも他業種と同様に、残業時間の明確な上限を守ることが義務化されました。


■ 時間外労働の上限(法定)

時間外労働に関する上限は、**労働基準法36条(36協定)**の枠組みに基づいて定められています。

● 原則(一般条項)

  • 月45時間以内

  • 年間360時間以内

● 特別条項(繁忙期など)でも超えられない“絶対的上限”

  • 720時間以内

  • 複数月平均 80時間以内(休日労働含む)

  • 1か月 100時間未満(休日労働含む)

  • 月45時間超は 年6か月まで

これらは法律で厳格に規定されており、超えると労基法違反となります。


■ 適用時期と背景

IT業界ではプロジェクト納期や障害対応などにより長時間労働が常態化しやすく、健康被害や離職増加が課題となっていました。
このため、猶予期間が設けられていたシステム開発業務にも上限規制が適用されることになりました。

  • 大企業:2024年4月から適用

  • 中小企業:2025年4月から適用


■ 違反した場合のリスク

上限規制に違反すると、労基法119条に基づき以下が科される可能性があります。

  • 6か月以下の懲役

  • 30万円以下の罰金

  • 悪質な場合は企業名公表の可能性も

また、客先常駐やSESであっても、所属企業には労働時間把握の義務があり、「管理できない」は認められません。


■ 企業が取り組むべきポイント

  • 無理のない工数見積もり・納期設定

  • 進捗管理の精緻化

  • 勤怠管理の徹底(客先常駐含む)

  • 障害対応のシフト制など業務負荷の平準化

  • 多重下請け構造の改善や契約の見直し

これらは、単なる残業削減ではなく、プロジェクト運営そのものの質の改善につながります。


■ まとめ

今回の上限規制の適用は、IT業界の働き方改革を大きく前進させるものです。
「長時間労働が当たり前」という体質から脱却し、健康的で持続可能な働き方へ移行することが求められています。

適正な労働時間管理を徹底することは、
エンジニアの健康、業務の品質、生産性向上、離職防止、企業価値向上 に直結します。

この機会に、企業としてもプロジェクト運営と労務管理の見直しを進めていきましょう。