コラム _ 2021年4月19日 【2020年民法大改正】契約ルールがどう変わったのかを実務目線で徹底解説 2020年4月1日、120年ぶりの大規模な民法(債権法)改正が施行され、契約に関するルールが大きく変わりました。特に「ルール実態の変更(新旧対比)」は、実務への影響が非常に大きい部分です。本記事では、このポイントを中心にわかりやすく整理します。 ① 【最重要】ルール実態の変更(新旧対比) A. 「瑕疵担保責任 → 契約不適合責任」への全面転換 ■ 新旧比較表:瑕疵担保責任 → 契約不適合責任 項目 旧:瑕疵担保責任 新:契約不適合責任 適用範囲 “隠れた瑕疵”に限定 契約内容に適合しない場合すべて 対象の考え方 瑕疵があるかどうかの判定が曖昧 契約内容(仕様・品質)との適合性で判断 買主(注文者)の請求権 ・損害賠償 ・契約解除 ・履行の追完(修補/代替物/不足分) ・代金減額請求 ・損害賠償 ・契約解除 実務リスク 瑕疵の判断が不明確で紛争に 契約内容の書き方が直接リスクに影響 👉 ポイント:仕様・要件を契約書に“明確に書く”ことが前提の時代に。曖昧な契約は企業側の大きなリスクになります。 B. 定型約款の法定化(利用規約の位置づけが明確化) ■ 新旧比較表:定型約款(利用規約) 項目 旧ルール 新ルール(定型約款) 規約の根拠 判例ベース(黙示の同意) 民法に明記され法的枠組みが整備 契約内容への組込み 法的要件が曖昧 ・相手方が知り得る状態 ・相手方の承諾(同意ボタンなど) 規約変更 法的明確性が弱い 一方的な不利益変更の要件を規定 👉 「メール通知 → 一定期間後に変更適用」が民法で処理可能に→ 企業の規約運用が法的に安定。 C. 消滅時効のルール統一(5年・10年) ■ 新旧比較表:消滅時効 項目 旧 新 時効期間 職種・請求内容ごとに1・2・3・5・10年などバラバラ ・主観:権利を行使できると知った時から 5年 ・客観:権利行使が可能になった時から 10年 実務の負担 管理が非常に煩雑 「5年・10年」を軸に一元化可能 👉 債権回収・売掛管理では、社内の時効管理ルールの再設計が必須。 D. 保証ルールの厳格化(簡易まとめ) ■ 新旧比較表:保証ルール 項目 旧 新 個人保証 口頭でも実質的に有効と扱われることが多い 書面・電磁的記録が必須。形式が整わなければ無効 事業融資の保証 明確な意思確認がなくても成立するケースも 「保証意思確認」が明文で義務化 経営者保証 慣行依存 ガイドライン・民法の明確化で見直しが加速 👉 不意の個人保証を防止する保護が大幅強化。 ② 改正の背景(なぜ120年ぶりの大改正が必要だったのか) 旧民法は、 明治時代(商取引が物品中心) IT・サービス・サブスクリプションが存在しない era 規約・プラットフォーム・デジタル契約が想定外 という前提で作られていました。 その結果、実務では 判例の積み上げ 商慣行 企業側の契約書の作り込みで現代の取引を“補完”してきましたが、法的な裏付けが不十分な部分も多くありました。 👉 グローバル基準に合わせ、現代のビジネス実態に対応するため、民法の全面リニューアルが必要だったのです。 ③ 実務で今も求められる重要対応 民法改正は施行済みですが、未対応の企業もまだ多い実務分野です。 1. 契約書の全面見直し(最重要) 契約不適合責任を踏まえた条文整備 仕様の定義を“曖昧に書かない” 検収方法の明確化 損害賠償・免責条項の整理 特にシステム開発・Web制作は仕様紛争の増加傾向。→ 仕様書・要件定義が契約の中核に。 2. 利用規約(約款)のアップデート 「定型約款」として扱われる前提での設計が必須 規約変更手続きのルール整備(通知方法・適用時期など) 3. 時効管理フローの更新 売掛金・請求権を「5年・10年」で統一管理 システム・社内手続のアップデートが望ましい ■ まとめ 2020年の民法大改正は、契約社会の土台を現代化した歴史的改革です。特に 「契約不適合責任」への転換 は、企業・フリーランスの契約書作成やリスク管理の発想を大きく変えました。 仕様を明確化 利用規約の適切な運用 時効管理の見直し これらは今も“現役”の対応事項であり、企業規模を問わず重要な課題です。 事業を開始しました2021年3月9日近年の個人情報保護法改正について2022年3月17日