コラム

【2020年民法大改正】契約ルールがどう変わったのかを実務目線で徹底解説

2020年4月1日、120年ぶりの大規模な民法(債権法)改正が施行され、契約に関するルールが大きく変わりました。
特に「ルール実態の変更(新旧対比)」は、実務への影響が非常に大きい部分です。
本記事では、このポイントを中心にわかりやすく整理します。


① 【最重要】ルール実態の変更(新旧対比)

A. 「瑕疵担保責任 → 契約不適合責任」への全面転換

■ 新旧比較表:瑕疵担保責任 → 契約不適合責任

項目 旧:瑕疵担保責任 新:契約不適合責任
適用範囲 “隠れた瑕疵”に限定 契約内容に適合しない場合すべて
対象の考え方 瑕疵があるかどうかの判定が曖昧 契約内容(仕様・品質)との適合性で判断
買主(注文者)の
請求権
・損害賠償 ・契約解除 ・履行の追完(修補/代替物/不足分) ・代金減額請求 ・損害賠償 ・契約解除
実務リスク 瑕疵の判断が不明確で紛争に 契約内容の書き方が直接リスクに影響

👉 ポイント:仕様・要件を契約書に“明確に書く”ことが前提の時代に。
曖昧な契約は企業側の大きなリスクになります。


B. 定型約款の法定化(利用規約の位置づけが明確化)

■ 新旧比較表:定型約款(利用規約)

項目 旧ルール 新ルール(定型約款)
規約の根拠 判例ベース(黙示の同意) 民法に明記され法的枠組みが整備
契約内容への組込み 法的要件が曖昧 ・相手方が知り得る状態 ・相手方の承諾(同意ボタンなど)
規約変更 法的明確性が弱い 一方的な不利益変更の要件を規定

👉 「メール通知 → 一定期間後に変更適用」が民法で処理可能に
→ 企業の規約運用が法的に安定。


C. 消滅時効のルール統一(5年・10年)

■ 新旧比較表:消滅時効

項目
時効期間 職種・請求内容ごとに1・2・3・5・10年などバラバラ ・主観:権利を行使できると知った時から 5年 ・客観:権利行使が可能になった時から 10年
実務の負担 管理が非常に煩雑 「5年・10年」を軸に一元化可能

👉 債権回収・売掛管理では、社内の時効管理ルールの再設計が必須。


D. 保証ルールの厳格化(簡易まとめ)

■ 新旧比較表:保証ルール

項目
個人保証 口頭でも実質的に有効と扱われることが多い 書面・電磁的記録が必須。形式が整わなければ無効
事業融資の保証 明確な意思確認がなくても成立するケースも 「保証意思確認」が明文で義務化
経営者保証 慣行依存 ガイドライン・民法の明確化で見直しが加速

👉 不意の個人保証を防止する保護が大幅強化。


② 改正の背景(なぜ120年ぶりの大改正が必要だったのか)

旧民法は、

  • 明治時代(商取引が物品中心)

  • IT・サービス・サブスクリプションが存在しない era

  • 規約・プラットフォーム・デジタル契約が想定外

という前提で作られていました。

その結果、実務では

  • 判例の積み上げ

  • 商慣行

  • 企業側の契約書の作り込み
    で現代の取引を“補完”してきましたが、法的な裏付けが不十分な部分も多くありました。

👉 グローバル基準に合わせ、現代のビジネス実態に対応するため、民法の全面リニューアルが必要だったのです。


③ 実務で今も求められる重要対応

民法改正は施行済みですが、未対応の企業もまだ多い実務分野です。

1. 契約書の全面見直し(最重要)

  • 契約不適合責任を踏まえた条文整備

  • 仕様の定義を“曖昧に書かない”

  • 検収方法の明確化

  • 損害賠償・免責条項の整理

特にシステム開発・Web制作は仕様紛争の増加傾向。
→ 仕様書・要件定義が契約の中核に。


2. 利用規約(約款)のアップデート

  • 「定型約款」として扱われる前提での設計が必須

  • 規約変更手続きのルール整備(通知方法・適用時期など)


3. 時効管理フローの更新

  • 売掛金・請求権を「5年・10年」で統一管理

  • システム・社内手続のアップデートが望ましい


■ まとめ

2020年の民法大改正は、契約社会の土台を現代化した歴史的改革です。
特に 「契約不適合責任」への転換 は、企業・フリーランスの契約書作成やリスク管理の発想を大きく変えました。

  • 仕様を明確化

  • 利用規約の適切な運用

  • 時効管理の見直し

これらは今も“現役”の対応事項であり、企業規模を問わず重要な課題です。